当院症例集〜義歯(入れ歯)編

症例1 磁石と金属床の義歯(入れ歯)      55歳女性 治療期間2年(仮義歯での経過観察期間も含む)

術前(レントゲン写真)
術後(レントゲン写真)
術前(上顎・模型)
術後(上顎・口腔内写真)
術前(下顎・模型)
術後(下顎・口腔内写真)
上顎の最終義歯表側
  上顎の最終義歯裏側
下顎の最終義歯表側
  下顎の最終義歯の裏側
最終義歯装着後の口腔内写真
   
(マグネットして9年、最終義歯にして7年経過)

症例1 歯牙移植とインプラントとマグネット(磁石)のコラボレーション 65歳女性 治療期間1年

術前(レントゲン写真)
術後(レントゲン写真)
術後(口腔内写真)
  義歯装着後(口腔内写真)
上顎義歯の裏側
   
10年後

《治療経過》

  • 左上2番、3番、右上1番、2番、左下5番を抜歯し、上下治療用義歯をセットする。
  • 左上3番、6番(口蓋根は抜根)の根幹治療、歯周治療を行う。
  • 右下6〜左下4までの歯周治療を行う。
  • 右上7番を抜歯し、同時に下に埋まっている親知らずを右上7番に移植する。
  • 右下の延長ブリッジと左下4番のクラウンをセットする。(ここまでが、保険診療の範囲です。)
  • インプラントの診査とカウンセリングを行う
  • 左下5,6番にインプラントを2本埋入する。
  • 右上7番(移植歯)、左上3番、6番にマグネットキーパーを装着する。
  • 左下のインプラントの上部構造をセットする。
  • 上顎の最終義歯を作製し、マグネットを義歯にくみこむ。

(10年後の総評)ー残念なことに術後7年くらいで、左上の磁石の支台となった糸切り歯は抜歯となりました。また、右下6番の予後を考慮して、術後5年で延長ダミーは切断除去しました。上顎の義歯に関しましては、1回裏打ちを行いましたが、新たに作製したものはありません。何でも噛めるということなので、今のところ再治療は考えていませんが、左上犬歯のマグネットコーピングによるサポートが無くなると、いずれ上顎前歯部歯茎がフラビーガム(ぷよぷよな歯茎)になることが予測できます。そのため、定期検診での咬合のチェックは必要ですが、フラビーガムの発生は避けられないものではないかと個人的に思います。これは、下顎すべての健全歯残存もしくは下にフルのインプラントブリッジで、上が総義歯の場合、発生する確率が高いように思えます。そのため、今後の高齢化社会に対応して、固定式インプラントにとらわれず、IOD(インプラントサポートオーバーデンチャー)の採用も考えるべきだと個人的に思います。

症例1 歯牙移植とインプラントとマグネット(磁石)のコラボレーション      65歳女性 治療期間1年

装着前 口腔内写真
新義歯装着後 口腔内写真
旧義歯
  新義歯
新義歯 上顎・裏側
   
8年後口腔内写真
8年後義歯
咬合面観
参考例咬合面PG
メタル
8年後義歯
内面

2年半前に当医院で保険範囲内の総義歯を作製する。なんでも硬いものがかめるため、今日に至るまで2回程保険の上顎の総義歯がハセツしました。今回は、われにくくあまくなったときにも対応できるように望まれたため、表側(舌側)は金属、裏側(口蓋側)はプラスチックの保険外の義歯を作製しセットしました。本当は、金属だけで中央部を作製したほうが、違和感は少なく、熱伝導性がよいのですが、歯茎が痩せたとき修理がたいへんです。実は、総義歯の場合金属よりプラスチックの方が歯茎とのなじみがよいのです。ただ、われやすいという欠点、厚さによる違和感は否めません。この方は、糖尿病をわずらっており、歯茎がやせることが予測できるのでこのような設計にしました。あと、上奥歯(尖がり、赤点)と下奥歯(へこみ)がちょうど杵と臼のようにはまりこむリンガライズドオクルージョン(奥歯の5点接触)という咬合様式を採用しました。長期症例でも紹介したようにいずれかめる上顎総義歯の尖がり(機能咬頭)は、すりへります。専門用語ですが、フルバランスオクルージョンという咬合様式に移行します。写真は、セット1週間後に撮影したものです。幸い吸着もよく、痛みを訴えるところもなく順調です。

(8年後の総評)ー噛める総義歯の宿命です。綺麗に奥歯の硬質レジン人工歯がすり減り、リンガライズドオクルージョン→フルバランスドオクルージョン→前噛みになってきました。審美性を無視して、奥歯を金属歯にすれば、また違った結果になっていたと思います。高齢のため、今のところ作り直しは考えていませんが、何でも噛めるとのことです。今後修理で対応する場合、人工歯を金属歯に交換ですかね。しかし、たった25万で8年問題なしに快適に過ごしていますので、それは良かったことだと捉えています。物には必ず寿命があります、嗜好品、身体の状態、口腔内の状態によって結果は違ってくることを患者さんにいつも理解していただきたいと思っています。人の寿命が個人で違うように。


症例4 ノンクラスプデンチャー(スマートデンチャー、スマイルデンチャー)
     60代女性

基本的にこの手の入れ歯は、私から患者さんにすすめることははほとんどありません。また、できると思う先生でやっているのをみたこともありません。患者さんが希望され適応があえば作製する入れ歯です。しかしどうしてもという場合は、金属を併用し、しっかりと金属レスト、ガイドプレーンの付与が絶対不可欠だと思います。特に片側処理の場合は、いれておくだけの入れ歯になることも理解しておいたほうがよいと思います。幸い3年経過しますが、問題は生じていません。なぜなら、クリアランスがあり、メタルアップ、レスト、ガイドプレーンを考慮してあるからです。(右下にダメなノンクラスプの例を提示しました。)

(7年後の総評)ー7年経過しますが、特に問題がないとのことです。なぜか?設計を私がしているからです。機能を考えた場合、そこそこの技工所ならどこに出してもあまり大差はありませんね。これは愛知の技工所です。他にも大阪、神奈川、京都にも出しますかね。気分次第です。笑。
7年後正面観
7年後上顎咬合面観
7年後下顎咬合面観

症例5 重度歯周病の残存歯を利用したマグネット(磁石)デンチャー(入れ歯)
     60代女性

憔悴しきった感じで当医院を受診された方です。歯がなくなるのが怖くて、歯磨きもできず治療にたいしても一日伸ばしになっていたとのことでした。たまに見かけますが、珍しい歯石ブリッジを形成しています。すべて抜歯して総入れ歯になるのはしょうがないと自覚はされていましたが、できれば目立たないようにやってくれと希望されました。自費であれば患者さんの望みをかねえることはたやすいことです。また、全部の歯を抜歯する必要もなくなります。保険では無理ですけどね。私は、このような症例は慣れていますので、お金をだしてくれて生活習慣を改善してくれれば全く苦になりません。なんでこうなるまで放っておいたなんて失礼なことはいいませんが、礼を欠く人、丁寧語を使えない人、最低限の時間を守れない人は嫌いです。幸い患者さんにも問題なく患者さんの希望どうりに歯なしの状態をつくらず治療を終えました。後は定期検診でいかにマグネットの歯を長持ちさせるかがポイントです。
術前パノラマレントゲン写真
正面観の口腔内写真
咬合面観の下顎口腔内写真
術後同
術後同
術後同
義歯装着後の正面観口腔内写真
下義歯の裏面
下義歯の表

症例6 保険の部分義歯(キャストパーシャル)
     60代女性

今(2013)から7年前、歯も痛く部分入れ歯も合わないため何とかしてほしいとのことで来院されました。保険での処置を希望さましたので、約1年で古い義歯を修理しながら、まずは保存可能な歯周治療、根管治療、修復治療並びに保存不可能な歯の抜歯を行いました。上の部分義歯は、最も難しいと言われるすれ違い咬合タイプのものとなります。まず、自費でも保険でも、残存歯の治療、咬合平面の均一化を考えないそこだけをみた治療の場合、いい結果を招くことはほとんどありません。断言します。十分に考慮してもうまくいかないことも多々あります。まして保険という材料、費用が限られた中でやる場合は成功率は3%以下だと思います。まあ〜患者さんも真面目で、かなり運も味方し、今回の場合、6年たった今でも問題なく機能しています。医院にとっての利益は、ほとんどありませんよ。
最後にレスト(支持)、クラスプ(維持)、舌側メタルアーム(把持)、ガイドプレーン(着脱時のガイド)を考慮することが、部分義歯の作製に際して一番重要なことだと思っています。あと、義歯作製に関してはその人の性質を十分に診ることも実に重要なことです。(笑)

注)粘膜被圧差、残存歯の負担能力、個々の咬合力を考慮し、上の残存歯を抜歯して、上は総義歯にする方がいい結果を招く場合もあります。

術前(2006)
7年後(2013)
義歯装着前正面観
同じく上咬合面観
同じく下咬合面観
義歯装着後正面観
同じく上咬合面観
同じく下咬合面観
上下部分義歯

症例7 重度歯周病の残存歯並びにインプラントを利用したマグネット(磁石)義歯
       (IOD)
       60代女性

この方も今から3年前に憔悴しきった感じで、当医院を受診されました。歯がなくなる恐怖により治療も1日伸ばしになっていたとのことでした。確かに残存歯は歯周病が著しく進行し、特に上の歯はいつ抜けてもおかしくない状態でした。大半の方が誤解されていますが、保険外の治療用義歯(パイロットデンチャー)を希望されれば、当医院ではほとんどの場合、1日での作製、装着は可能です。但し、上下で10万程かかりますが。この方も希望されましたので、抜歯後直ぐに治療用の義歯を作製、装着し、一旦終了としました。
しかし、左下に歯がなくいわゆるすれちがい咬合のため、常に左下に義歯の傷ができ、また、左下顎骨の吸収も著しく、義歯の安定は困難を極めました。右下も金具が引っかかるタイプの治療用部分義歯のため、動揺もかなり認めるようになりました。そこで、右下の動揺が著しい歯には、側方圧がかかりにくいマグネットを、左下は義歯の沈下、動きを抑制するためにインプラントサポートのマグネットを提案しました。同意されましたので、残存歯の根管治療並びに歯周病治療、インプラント治療、治療用義歯改変を行いました。
4ヶ月で治療終了し、メンテナンスに移行。2年後写真を撮ってみると、左下顎骨の吸収並びに右下3、4番の歯の歯周病進行は抑制されていました。義歯での疼痛を訴えることこともなく、経過良好です。また、改心したようで、自己管理も言うことなしです。

注)恐らく、インプラントを使用しないでの義歯安定はありえないと断言できます。また、左下顎骨吸収による神経麻痺も回避できたのではないかと思います。本当に意味のあるインプラントと言えます。
術前
術後
術後正面観
右下術前
治療中
術後2年

症例8 下顎高度顎堤吸収に対してのソフトデンチャー(ゴムデンチャー)
       60代女性

遥々2つの市をまたいで、当医院を受診されました。保険で作った下の総義歯(入れ歯)が、痛くて噛めないことと入れ歯を使うと顎が痺れた感じがするとのことでした。こういう訴えの場合、難儀することは目に見えています。そこで、でかいレントゲン写真をとってみると、やっぱりかと思いました。合わない入れ歯をずっといれていたせいか、ダメな歯周病の歯を抜歯せずに保存に固執したせいか、または糖尿病や骨粗鬆症に罹患したせいかで、下顎の顎堤が高度に吸収し、顎の神経の出口がちょうど歯茎の直下に存在しているのがわかります。そのため、それを咀嚼時、義歯が圧迫するため、違和感が生じるのでしょう。私も決して義歯が上手だとは思っていませんので、インプラントを併用した入れ歯を提案することが多いのですが、拒否されましたので、ゴムの入れ歯を提案してみました。この手の義歯は、1年に一回程度下敷きのゴムを交換する必要があるため、義歯用ミニインプラントに比べて長い目で見た場合、維持費がかり、物が噛みにくいと思っていますが、上顎が総義歯の場合フラビーガムになるリスクの軽減や外科処置回避が最大の利点かもしれません。
そこで、希望されましたのでやることにしました。義歯作製もいろいろと流派があり、いいとこ取りしたいと常々思っていますが、なかなか保険では不採算のため、できる範囲でとなることが多いのが実情です。
一応、今回の場合、義歯作製の良い要件3つを満たすことができました。以下に記します。
1.割り箸をかんで、上義歯が転覆しないこと→比較的大きいものが噛めます。
2.小刻みにぎりぎりしたとき、義歯が転覆せず疼痛を訴えないこと→比較的細かいものが噛めます。
3.3横指開口して義歯が浮き上がらない→義歯の内面にものが挟まりにくいです。
というものです。幸いさほど痛みを訴えることなく順調に経過していますが、ゴム床ではなく、レジン床で上手く作製する歯科医も世の中には存在することを知っておきましょう。今の私には無理かもしれません。恐らくそういった先生方は、顎舌筋線群付近や臼後三角付近の義歯床縁形態が物凄く上手に付与することできること、咬合平面にそった人工歯配列ができること、中心位バイトの採得の仕方が上手いことなどが挙げられると思います。しかし、残念なことに患者さんによっては、でかい入れ歯は違和感があり嫌だとかで、学問的には良くないとされている小さい入れ歯を何不自由なく使用されているケースも多々認めます。だから、入れ歯は個人差があり、本当に難しい歯科の分野だと思っています。入れてもらわなければ、ただのガラクタですから。笑

注)どうしてもインプラントが嫌でダメな場合、フラットの柔らかいレジン歯を使用することが多いですかね。正に逃げの一手です。しかし、咀嚼効率は悪いでしょう。


症例9 下顎重度歯周病の残存歯を利用したマグネット(磁石)デンチャー(入れ歯)
     80代男性

約4年前(2012年)物が噛めないので何とかしてほしいとの切実な訴えのもと、当医院を受診されました。できれば残存歯を生かした治療を希望され、費用はそこそこかかってもしょうがないとのお考えの方でした。そこでまず、治療用義歯を使用しての顎位の探索やマグネットや根面板で使用できそうな下顎の残存歯の治療を行うことにしました。幸い約5ヶ月の治療期間で無事治療を完了し、メンテナンスに移行することができました。私の場合、保存可能な残存歯の根管治療や歯周治療は徹底的に妥協を許さず行います。いずれ抜歯になるからという気持ちでは行いということです。そのかいあってか、メンテナンスに来られている方で早期にマグネットがだめになるという経験は殆どありません。勿論、10年という単位では、義歯装着、降圧剤の服用、加齢などにより唾液分泌の低下に伴う根面キャップの二次虫歯発生は否めないと思いますが、残存歯抜歯等で生じる顎堤吸収による下顎義歯の不安定化を阻止できることは紛れもない事実だと言えるでしょう。
ところで、別な治療法にワンランク上のマグネットを使用しないコーヌスクローネという超精密の義歯作製法もあります。利点は1.マグネットより維持が得られること、2.内冠を根面キャップとは違い高く設定するので唾液の自浄作用により二次虫歯になりにくいこと、3.違和感が少なく、審美性が良いこと、5.バネのかかる義歯に比べて修理がしやすいことだと思いますが、欠点は1.費用がかかる、2.マグネット義歯に比べて修理が面倒、3.内冠の歯に抵抗がかかりすぎると歯根ハセツがおきやすいこと、4.超精密作業であること等が挙げられると思います。そのため、私はコーヌスクローネデンチャーは残存歯ではやらないようにしています。今回マグネットで対処しましたが、幸い問題なく食事ができているとのことです。

注)全部抜歯して、総入れ歯も間違った選択ではありません。もし、患者さんがそのような選択をされる場合、年齢、循環器疾患、代謝性疾患などを考慮して、高次機関に抜歯だけ依頼するようにしています。全身管理下で一気に抜歯してくれることが多いので、来院回数を抑えれるため、実は患者さん、開業医にとって利点だらけなのですがね。煩わしいといって拒む人もいますが、自分の身体であることをもっと理解した方がいいと思いますよ。因みに私は観血処置の際、必ず問診、その日の体調、血圧測定、SPO2、脈拍を測りますので、今のところ救急車騒ぎを経験したことはありません。勿論、明日経験するかもしれませんがね。
術前パノラマ
レントゲン写真
術前口腔内写真
3年後パノラマ
レントゲン写真
3年後口腔内写真
3年後義歯装着時

症例10 重度歯周病の残存歯抜歯後の上下総義歯
     70代男性

物が噛めないとの事で、奥様の紹介で来院されました。重度の全身疾患(度重なる心筋梗塞、狭心症、不整脈によるペースメーカーの装着)を患っていて、付き添いの人のサポートが必要な状態でした。この場合、良かれと思って保存できる歯を残しても、患者さんのためにはなりません。歯磨きなどの自己管理ができないと、全身疾患の増悪を招く恐れが十分に考えられるからです。お口の中の雑菌が、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、リウマチなどの悪化に影響を与えることを十分に理解しておく必要があります。また、歯周病が悪化すると顎の骨が吸収していることが多く、なかなか安定の良い総義歯を作製することは困難を極めることが多いです。そこで、今回はすべての残存歯の抜歯後、即時仮義歯の作製、傷の癒える4ヶ月後に最終義歯を作製する計画を立てました。このケースの抜歯は、患者さんの健康状態、抜歯の回数を考慮して、私が信頼のおける高次機関に紹介するのが最良です。患者さんは素直に私の進言に従い、実際抜歯のみ依頼しました。直ぐに抜歯していただき、1週間で食事の不自由がないように治療用の臼歯部咬合面フラットの即時義歯を保険でまず作製しました。抜歯穴の傷が癒えるであろう4ヶ月の間、粘膜の調整や本来の顎位(中心位)を探り、無事最終義歯は保険外の上金属の義歯、下プラスチックの義歯を作製することができました。手で咬合平面に垂直に力を入れてとろうとしても、なかなかとれない吸着がかなり良いものとなりました。いずれ動画でアップしたいと考えています。患者さんも大変喜ばれ、何でも噛めるとのことです。このように、患者さんの健康状態、顎の状態によって、治療の仕方も変わってくるということです。即ち馬鹿の一つ覚えに歯を保存したり、インプラントにすることが良いとは限らないということです。適応を見極めることが重要と言えるでしょう。

術前パノラマ
レントゲン写真
4ヶ月後の口腔内
写真
最終義歯装着後

症例11 上顎マグネット(磁石)コーヌス金属床義歯(入れ歯)
     70代女性

今(2017年)から10年前、上の義歯の不調で当医院を受診されました。残存歯の状態も良くなく、既に骨そしょう症を患っており、多少費用がかかってもインプラントではない違和感の少ない噛める義歯作製を希望されていました。そこで、マグネットを併用したコーヌスタイプの金属性義歯を作製することにしました。上残存歯4本の保存治療を兼ねて、仮義歯を使用しての約半年の治療となりましたが、患者さんの希望をかなえることができました。あれから9年の歳月が流れ、歯茎の退縮による若干の修理は行いましたが、マグネットの義歯からの脱離も1回もなく、問題なく使用できています。安定、修理のしやすさ、裏打ちを考慮して違和感の少ない口蓋をくり抜くタイプにしなかったことが、功を奏しているのだと思います。幸い今のところ裏打ち(リベース)は行っていません。当時軽自動車一台分の費用でしたが、費用対効果は十分過ぎるものではないでしょうか?因みにどこでやっても同じような結果になるとは思わないでくださいね。定期検診、自己管理に関しては口五月蝿く言っていますので、それを遵守できた人達のみが問題なく使用しているということです。しかし、再治療時の歯の状態、患者さんの習癖によっても違った結果になることも重々理解してくださいね。まあ、この手の義歯、見よう見まねでやってもいい結果は招かないことは断言できます。マグネットキーパーのテーパー角度は?とか、マグネットをどうやって義歯につけるのか、タイミングは?とか、どういう風にリベースするのだとか、どういう風に外冠の修理をするのだとかです。瞬時に応えれる人は、凄いなあと一目置くでしょう。
マグネットキーパーセット時
仮義歯
最終義歯
最終義歯表側
最終義歯裏側
9年後

症例12 下顎重度歯周病の残存歯を利用したマグネット(磁石)デンチャー(入れ歯)
     70代女性

今(2017年)から6年前、歯が痛くて物が噛めないのでなんとかしいとのことで受診されました。患者さんには悪いですが、お先真っ暗な状態であったことを記憶しています。しかし、前向きな人には悲観的なことを言わないようにしていますが、この状態で早く、安く、簡単に、痛くなく、自分の都合に合わせろという方には、悪いですが他でセカンドオピニオンいや厳密には歯科相談をするようにといって何も弄わず放流するようにしています。笑。そこで術前模型、レントゲン、CTを見せて治療方針を説明したところ、納得されましたのでやることにしました。下顎前歯(3〜3)以外は残念ですが抜歯となり、即時義歯を装着しながらの治療となります。幸い約10ヶ月ほどかけて、下前歯4本CR固定、下左右3番マグネットによる最終部分入れ歯、上総義歯を作製してメンテナンスに移行することができました。しかし残念なことに3年後、下前歯4本に二次虫歯の発生並びに左下2番の歯根ハセツを認めるようになったため、左下2歯の抜歯並びに下前歯3本の神経処置→メタルコーピング、義歯の増歯並びに修理りベースを行うことにしました。二次虫歯発生は、降圧剤の服用やプラスチック義歯装着による口腔内の乾燥が原因と考えられます。まあ、マグネットキーパーが装着されている左右犬歯以外抜歯するという考えも悪くないと思いますが、特に重度の歯周病に侵されていない歯根の場合、残存歯を根っこだけ保存することにより顎提吸収をある程度抑えることができるので、舌があり義歯の面積が制限される下顎総義歯においては有効な方法だと個人的に思います。勿論、検診できなかったり、歯磨きできない場合は、全身疾患を考慮すると抜歯の方が賢明でしょう。しかし、抜歯の方が百倍簡単なのですがね。笑。保存する場合、根管治療が必要となります。しかし、高齢の方、噛み締めのある方、慢性の虫歯を患ってた場合など下顎前歯の根管が石灰化していることが多く、根管処置は困難を極めることが多いです。今回の場合もマイクロ、NTファイルがなければ綺麗に根管治療することは難しいと言えるでしょう。幸い無事2回で終了することができました。この症例の一番のポイントだと思います。後は旧義歯を改変して、使用していただくことにしました。あれからさらに3年の歳月が流れましたが、今のところ二次虫歯の発生や義歯の不都合を訴えることなく経過順調です。
術前
3年後
6年後