症例1 すっき歯&切端咬合
マウスピース矯正(ノーブレード矯正)

20代男性

術前
マウスピース矯正を希望され、当医院を受診されました。合計10個のマウスピースを当医院で作製し、1年半使用してもらいました。真面目に1日10時間以上着用していただいた結果、比較的短期間で終了したと思います。
術後

症例2 左上側切歯クロスバイト(舌側転位)
リンガルアーチ
20代男性


術前
左上の側切歯の反対咬合が原因で、下の歯が折れてしまい、なんとかしてほしいとのことで受診されました。下の歯は抜歯になり、ブリッジを希望されましたが、このままのかみあわせで作製した場合、予後は悪いと言わざるを得ません。そこで、上の側切歯の部分矯正を提案したところ希望されました。目立たないようにやってほしいとのことで、リンガルアーチという矯正装置をしようしました。3か月ほどで無事にかみ合わせが改善しブリッジを作製し治療終了となりました。
装置装着後
術後

症例3 右上側切歯クロスバイト(舌側転位)
ミニインプラント矯正

20代男性

術前
右上の前歯の反対咬合とむし歯ををなおしてほしいとのことで、受診されました。通常であればリンガルアーチを使用するのですが、アンカーになる奥歯も神経の治療中のため、今回は矯正用のミニスクリューを使用しました。3か月ほどで無事終了しました。
術後

症例4 正中離開(すきっ歯)
上唇小帯切除術

術前
上の前歯のすっき歯が気になるとのことで受診されました。上の前歯が生え変わる時期はアグリーダックのステージといわれ隙間があるのが正常ですが、この場合上唇小帯とよばれる筋が高位に付着し前歯の崩出を邪魔しているのがわかります。炭酸ガスレーザーで切除後、3か月ぐらいで隙間は埋まってきました。
術後

症例5 左上5逆生歯の正位矯正,並びに下前歯の叢生、上矮小側切歯、右下4先欠歯の補正矯正
マルチブラケットシステム + ホールディングアーチ
10代女性
検診の際、右下4番先欠、左上5番の逆生歯ならびに下前歯の叢生を親御さんに指摘したところ、矯正治療を希望されました。親御さんは、できるだけ永久歯を抜歯しないことを望まれましたので、自然には生えてこないであろう左上5番の逆生歯を引っ張り出す必要があります。あと、過蓋咬合、ボルトンの不調和を補正するため、下顎臼歯の挺出、下前歯部の叢生解消ならびに最小限の補綴処置(左下5)も必要となってきます。そのため、今回の場合、口腔外科、補綴処置、予防処置もできる先生がやるほうが、治療が円滑に進むのではないかと思います。
今回も無事、2年でブラケットオフできました。3本抜歯し、正中を合わせ、口元をシャープにする矯正治療法もありますが、本人、親御さんは抜歯しない治療成果に対して満足されています。

注)若干の左上1の下がりは、マウスピースの保定装置で修正してあります。

術前
術中
上ブラケット装着
下ブラケット装着
術後
ブラケットオフ正面観
下ブラケットオフ

保定ワイヤーセット
上ブラケットオフ
+マウスピース保定

症例6 インプラント不要の左上7部への親不知の近心移動(MTM)
30代女性

術前
セカンドオピニオンで当医院を受診されました。前医では、左上の奥歯を2本(6,7番)を抜歯し、インプラントをすすめられたとのことでした。まあ〜、間違いとも言えないでしょう。しかし、短絡的にここだけをみた治療を行ってもインプラントの予後は悪いと言わざるを得ません。かみ合わせがきつい(クリアランスがない)こと対合となる下の歯が根尖病巣で侵された状態のため、物はかめないでしょうね。そこで私のいうことはすべて聞くという条件で、上8→7矯正、上6,8下6,7番の根幹治療、上下6,7歯冠延長術を行うという治療計画を立てました。無事5か月で部分矯正は終了しました。インプラントをやるよりも何十倍も難しく、患者さんへの貢献度も高い治療法だと思いますよ。
術中
術後
修復後

症例7 乳歯の反対咬合(受け口)の簡易矯正 
ムーンシールド

術前
乳歯の反対咬合を主訴に来院されました。永久歯歯列で治ることもありますが、乳歯のうちから治療しておくほうが賢明だと思います。ムーンシールドとよばれるマウスピースを口の中にいれておくだけで改善されることが多いです。しかし、遺伝的傾向が強い場合は、永久歯列後に再び後もどりすることが非常に多いので成長期を過ぎてから再矯正が必要になってくることを十分に理解しておきましょう。
術中
術後

症例8 縁下カリエス(歯茎の下まで進んだむし歯)の修復治療のための挺出矯正(MTM)+歯冠延長術
30代男性

術前
左上の糸きり歯の歯茎が痛くて来院されました。レントゲンからもわかるように歯茎の下まで黒いむし歯が進んでいるため、保険では抜歯ですよと患者さんに説明したところ、自費でもいいから保存してくださいと言われました。そこで、歯茎を開き、むし歯を完全に除去後、周りの骨を削除して外科的に健全な歯質を3ミリ程歯茎より出しました。(歯冠延長術)。その後、歯の段差を解消するために歯を引っ張り出す矯正を行いました。最後にかぶせて終了です。かぶせものは予算の関係で保険の材質ですが、術後6年問題なく機能しています。
術中1
術中2
術後6年

症例9 縁下カリエス(歯茎の下まで進んだむし歯)の修復治療のための挺出矯正(MTM)+歯冠延長術
60代女性

歯茎の下までむし歯が進行し一般的には保存が難しい状態です。
むし歯を可及的に除去し、神経の治療を完了した状態です。
むし歯を完全に除去するため、矯正装置を装着し、歯を歯茎から引っ張りです。
歯茎を開き、周りの骨を削除し帯環効果得られるように歯茎から1ミリ歯質がでるように歯冠延長術を施す。歯茎治療後柱を装着し、被せて終了しました。一番下の写真は術後3年のものです。

症例10 第二大臼歯の第一大臼歯への近心移動+八重歯の矯正
マルチブラケットシステム+ミニインプラント矯正
 40代女性

術前
右上の6歳臼歯(第一大臼歯)は、歯に穴があいており保存不可能のため抜歯しました。インプラントもいいかもしれませんが、患者さんの経済的負担、肉体的負担を考慮し全顎矯正で奥の第二大臼歯を手前に移動することにしました。しかし、平行に移動するにはかなり難易度が高いと言えます。なぜなら、手前に抜歯穴がありますが、第二大臼歯の根っこが上顎洞底の硬い皮質骨で覆われているからです。明らかに症例6よりも難易度は高いですよ。しかし、矯正用インプラントを併用すればある程度簡単に行うことができます。
術後
5か月後、手前の第二小臼歯のところまでほぼ平行移動したのが写真でわかると思います。しっかりと角ワイヤーにゲーブルベンドをいれたのも勝因でしょう。(笑)

症例11 縁下カリエス(歯茎の下まで進んだむし歯)の修復治療のための挺出矯正(MTM)+歯冠延長術
60代女性

術前
上の前歯のブリッジがむし歯で脱離したため、市内から来院されました。普通のやり方では、すべての歯は抜歯適応ですが、歯を引き上げる矯正を併用すればまた違った結果となることもあります。患者さんも抜歯後の入れ歯、インプラントが嫌だということでした。
挺出矯正
そこで、仮歯に矯正装置を組み込み2か月で歯を引き上げることにしました。引き上げ後、歯冠延長術を施し帯環効果を付与し、最終的にブリッジを装着し終了しました。。
術後4年
4年後、きれいな状態で維持しているのがわかる。

症例12 異常嚥下及び舌突癖によるオープンバイト(開咬)
下顎スパー付きリンガルアーチ
10代女性

上の前歯と下の前歯が、当たらず麺類が食べにくいとのことと歯科検診で開咬を指摘され、遥々南の市から受診されました。舌小帯の異常所見は認められませんでしたので、舌の習癖による開咬と判断し、上→前歯部のみマルチブラケットシステム、下→習癖改善のためのスパー付きリンガルアーチ装着の治療方針をたてました。
装着時の正面観、並びに下顎咬合面観
1ヶ月後、上下の前歯が当たり出してくる。下のスパーつきリンガルアーチは、2年ほど装着予定です。

症例13 右上1番(中切歯)残根の修復治療のための挺出矯正(MTM)+歯冠延長術
70代男性

3ヶ月に一度検診で来られている方で、右上の前歯が脱離したとのことで急遽再来院されました。死ぬまで入れ歯を入れたくないこと、インプラントをやりたくないこと、天然歯をできるだけ抜歯しないで残したいを条件に自費治療を希望されました。そこで、根っこだけになっている歯の引っ張り出し矯正を行うことにしました。逆転の一手と言えます。
虫歯除去、根っこの治療後、コアを直接ビルドアップしその上に仮歯を接着し、矯正の装置をつけました。
6週後、3ミリほど歯が引っ張りだされたのがレントゲン写真からわかります。根尖の黒くなった部分だけ上に歯が上がりました。
フェルール(歯茎より歯質が1ミリでている状態のこと。これがあることで、歯の破折、差し歯の脱離する確率が低くなります。特に舌側にフェルールがないといい予後は招かないでしょう。)が十分付与できたこと、引っ張り出し矯正により周りの歯茎が増殖してきたのがはっきりとわかります。
増殖歯茎の整形、生物学的幅径確保のため、臨床歯冠延長術を行う。患者さんの希望により、左上1番との連結クラウンにする。(審美性より、歯間ブラシをきちんと通したいとのことで、ブラックトライアングルはわざと設けました。)


参考例ーフェルール(帯環効果)がない例(40年前の教科書例)
私の学生時代の補綴学の教科書です。今とは、考え方が180度違います。(笑)。一昔前は、健全な歯質も除去し、根っこのだけの状態にしてから、土台をたて、被せ物を装着することが推奨されていました。俗に言う差し歯のことです。しかし、このやり方をすると、フェルールがあるときに比べて、土台がとれてきたり、根が折れてきたりする可能性が高くなります。また、無造作に電気メスで歯茎を整形することも生物学的幅径を考慮すれば、長期的に見た場合歯茎の炎症もしくは退縮を惹起しやすいでしょう。勿論、日々の臨床で妥協的にこのような状態にしなければならないことも多々ありますが、予後は悪いでしょうね。


症例14 八重歯、乱杭歯、咬合不正の矯正(マルチブラケット法+矯正用ミニインプラント併用)並びに保存治療、歯の移植、審美修復治療を含む包括治療(修復治療1年+矯正治療2年)
40代女性


注)症例10の方の全顎矯正と審美補綴症例です。インプラント、歯茎の移植(上前歯は本当ならやるべきです。)以外のすべてのテクニックを駆使しました。能登からわざわざ通院された方で、モニターになってもらいましたが、相当の気構えがないと途中で挫折するでしょう。一度の遅刻、無断キャンセルもありませんでした。気持ちよく治療をさせていただき、自分でもある程度満足がいく治療ができたのではないかと思います。あとは、以前の状態に戻らないように定期検診、自己管理を行うことが重要ですが、恐らくこの方なら問題なくやり遂げることでしょう。本当に遠方から来られる方にはいつも頭が下がります。やはり、言葉も重要かもしれませんが、行動、実証が一番だと思います。

術前正面観
術前上顎咬合面観
術前下顎咬合面観
術前パノラマ
矯正中
術中パノラマ
術後正面観
術後上顎咬合面観
術後下顎咬合面観
術後パノラマ


左上6番の術前レントゲン写真
抜歯後の前頭断CT
左上4番リフトアップ移植後3年の前頭断CT
同レントゲン写真
左下6番の術前レントゲン写真
左下6番、右下親知らず移植3年後のレントゲン写真
左下6番の術前前頭断CT
同3年後前頭断CT
上前歯の術前レントゲン写真
抜歯
左上7番の根尖病変 前頭断CT
術後3年前頭断CT

症例15 上顎前突(出っ歯)の床矯正
拡大床+ツインブロック
10代女性
小学校の3年生の頃、出っ歯を主訴に受診されました。上顎狭窄歯列、第一大臼歯部ENDONの2級咬合関係の上顎前突でした。この時期(女性の成長期)だからこそできる非抜歯の床矯正装置で、2段階の歯列矯正を行うことにしました。まず、上顎がV字歯列のため、前歯部のみ上顎を拡げる拡大床装置を使用してもらうことにしました。半年ほどで拡大を終了させ、次に顎位を前方(臼歯部咬合関係1級)にもってこさせ、臼歯部の挺出を促すツインブロックを永久歯歯列になるまで、使用してもらいました。その結果、抜歯することもなく、ブラケットを使用することなく上顎前突を治療することができました。

注)成長しきってから、4本もしくは2本(親知らず以外)抜歯し、ブラケットを使用したワイヤー矯正を行う場合もあります。一般的な治療法です。その場合、口元がシャープなEラインになると思います。しかし、中には、口の中が狭くなり(舌房)、発音しにくいとか息苦しいとか不定愁訴を訴える人もいるようです。一方、非抜歯矯正は、思っていたほど口元がシャープにならないとか、後戻りが抜歯矯正に比べて大きいかもしれません。非抜歯、抜歯矯正共に一長一短があることを理解しておくべきでしょう。

術前正面感
術前上顎咬合面観
術前下顎咬合面観
術前プロファイル
ファンタイプの拡大床装着
上顎歯列拡大後
ツインブロック装着
術後正面感
術後下顎咬合面観
術後プロファイル

症例16 大人の正中離開(すきっ歯)
マウスピース矯正(ノーブレード矯正)

20代女性
 
上の前歯が、ハの字に開き、見た目を良くしたいことを目的に当医院を受診されました。咬合関係1級の正中離開で、幼少期のおしゃぶりやくわえぐせが原因と考えられます。治療のやり方は、二つあります。無傷な歯を削り被せものを入れて、歯の形、色をなおす審美補綴修復法(クイック矯正法)と天然歯のホワイトニングを併用した歯列矯正法です。前者は、主に美容整形系の人工の美しさを目的としたもの、後者は、本来の自然歯の美しさを生かしたやり方と言えるでしょう。どちらの治療法がいいかは、個々の価値観の問題だと思います。しかし、もし自分の娘が、不幸に前歯の歯並び、色がコンプレックスで治療したいと言えば、見違いなく後者の治療法を選択することは断言できるでしょう。
前者の場合、被せるために神経をとる必要性があること、将来神経の治療がイマイチの場合根っこの先が化膿する可能性があること、無理に被せもので歯の軸面を補正するため将来歯が破折する可能性があること、連結固定の必要性があること、自然な形にする場合4本歯を削らなければいけない可能性があること、極度な転位歯は抜歯する必要があること、または歯周病、2次虫歯になりやすいことが最大の欠点だと言えるでしょう。一方、後者の場合、矯正装置(ワイヤー矯正の場合)をしばらくの間口の中に装着しなければいけないため見た目が気になること、歯磨きがしばらくの間大変になること、後戻りのリスクが欠点かもしれません。今回は、患者さんの希望、口の中の適応が合いましたので、ブラケットを使用したワイヤー矯正は行わず、マウスピースの矯正を採用することにしました。そのため、上記の欠点はすべて解消され、かつホワイトニングの同時進行も可能となりました
合計6つのマウスピースを作製し、幸い半年ぐらいで治療は終了しました。費用は40万程(上のホワイトニングは、モニター料としてサービスしてます。保定こみ)です。もし、4本オールセラミックの被せもので審美補綴(クイック矯正)した場合、恐らく40万は下らないでしょう。勿論、前歯がコンプレックスで、毎日が憂鬱でしょうがなく一刻も早く治したい、今が良ければそれで良いという方は、クイック矯正も仕方のないことだと思います。しかし、必ず根っこの治療が上手な先生に施術してもらうことをお薦めします。それでも将来、根っこの先が化膿する可能性は否めませんがね。また、抜歯も絡めてクイック矯正を行なう場合は、抜歯(頬側骨を破壊しない、隣在歯を傷つけない)や抜歯後の処理(ソケットプリザベーション、オベイド)が上手い先生を見つける必要もあるでしょう。恐らく、審美眼があるだけの歯科医では、その時だけの治療になってしまうでしょうね。

注)日本のタレント、元有名プロ野球選手の歯は、ほとんどがクイック矯正です。一方、アメリカの俳優は、矯正+ホワイトニングを行っている人が多いと言えます。アメリカでは、矯正できることが一つのステイタスなのです。日本人のようにブラケットワイヤーが見えるのが嫌だとか短期間に簡単に治したいという短絡的な考え方ではなく、天然歯のことを考えて矯正治療を選択するのです。驚くことに裏側矯正より表側矯正のほうが需要が多いらしいです。知ってのとおりアメリカは、自己責任の国です。予防には保険が適応されるのですが、治療に関しては自費となります。そのため、矯正治療により、審美障害の改善はもちろんのこと、虫歯リスク、歯周病リスクを予防的に軽減させることができ、後の治療を極力回避することを理解している国民性と言えるでしょう。自分の身体は自分で守る、日本人も見習うべき点ではないでしょうか?
最後に歯冠補綴、歯周連結補綴と審美補綴(クイック矯正)は、同類とみなさないで欲しいと常々思っています。明らかに健康な歯を削るという面においては、別のものと捉えるべきです。

術前
術後

症例17 上下前歯部叢生(凸凹)
マウスピース矯正
10代女性
 

虫歯予防の管理で、3ヶ月に一度フッ素塗布で幼少期から来院されている方です。上下の前歯の凸凹が気になるとのことで、ワイヤー矯正ではない方法での治療を強く希望されました。、第一大臼歯部1級の咬合関係の前歯叢生ケースで、ディスキング(歯と歯の間の隙間を設ける行為)を行えば、十分にマウスピース矯正の適応だと思いました。しかし、左右大臼歯間幅径の改善も行なうなら、ワイヤー矯正を行なうべきでしょう。なにはともあれ、ワイヤー矯正を頑なに拒否されましたので、15個のマウスピースを作製し、1年半かけてゆっくりと矯正を行いました。さらに並行して、上のみサービスでホームホワイトニングも行いました。後は、十分に保定を行なうわけですが、後戻りしやすいのが非抜歯矯正の特徴です。しかし、万が一、後戻りすれば、再度簡単にマウスピース矯正を行なえることが、ワイヤー矯正にはない最大の特徴と言えるかもしれません。

注)マウスピース矯正単体では、上下の動き、平行移動(歯体移動)のコントロールが難しいので、抜歯症例は適応外と私は考えています。マウスピース矯正の主たる歯の移動は、傾斜移動と言えるでしょう。

術前正面観
術前上顎咬合面観
術前下顎咬合面観
術後正面観
術後上顎咬合面観
術後下顎咬合面観
上のみ2週間ホームホワイトニング後
1年後

症例18 上下空隙歯列(すきっ歯)
マウスピース矯正
10代女性
 
すきっ歯の改善を主訴に当医院に受診されました。CR(プラスチック)によるダイレクトボンディング法、クイック矯正法(被せて歯の隙間を補正する方法)、マルチブラケットワイヤー矯正法、マウスピース矯正法のいずれかの治療法が考えられます。このケースは、矯正学的にはアーチレングスディスクレパンシーが+のため、歯に対して顎が大きいということです。そのため、咬合関係一級で、下顎前歯部歯冠が唇側傾斜していれば、若いので矯正治療が一番の選択肢と言えるでしょう。さらに言うと、傾斜移動を得意としたマウスピース矯正も可能と言えるでしょう。そのことを親御さんに説明し同意が得られましたので、マウスピース矯正を行なうことにしました。幸い合計15個のマウスピースを一日17時間以上真面目に着用してもらい、1年半でほぼ終了することができました。

注)1ミリ下顎前歯を舌側に傾斜移動させると2ミリ隙間が埋まることを考慮し、セットアップモデルを作製し治療計画をたてる必要があると思います。また、矯正期間中、CTなどで十分に下顎前歯の根尖が骨からはみ出ないことを確認することも忘れてはいけません。どうしても隙間が埋まらないと最初に予測できる場合は、3,4間の補綴処置も考慮しなければいけないことは事前に親御さんに言っておく必要はあるでしょう。
最後に、もしダイレクトボンディング法やクイック矯正で隙間を補正した場合、大きな歯になることは明らかでしょう。それでも、矯正治療ができないとか患者さんが早く短期間に治したいと希望される場合、悪いと分かっていてもその方法の選択も致し方のないことでしょうね。

術前正面観
術前上顎咬合面観
術前下顎咬合面観

症例19 下顎前突(反対咬合)、下顎前歯部叢生並びに
左下5番念転歯、左側小臼歯部交差咬合
マルチブラケットシステム+プレート、矯正用インプラント併用
40代女性

虫歯治療並びに歯並び改善を主訴に当医院を受診されました。虫歯治療に関しましては、それほど苦に感じませんが、歯並びに関しましては骨格性の反対咬合が疑われましたので本来であれば外科矯正も視野にいれなければいけない症例だと思います。外科矯正の場合、矯正治療は保険が適応され、患者さんにとっては費用の負担軽減になります。しかし、患者さんは、外科矯正を希望されず、歯並びだけの改善を強く希望されました。さらに矯正後の審美的修復処置も希望されたため、本来であれば矯正専門医に紹介する症例ですが、当医院で行うことにしました。まず先に、虫歯治療を行い、被せる必要がある奥歯を仮歯に置き換えました。半年ぐらいかかったと思います。次に矯正治療にかかるわけですが、構成咬合ができるかどうか、CTを撮影し下顎前歯の舌側傾斜が可能かどうか、
上顎の側方拡大が可能かどうかを吟味し、セットアップ模型を作成し下顎抜歯部位を選定しました。結果、右上犬歯も先欠歯のため、今回は失活歯である右下1番を抜歯するスリーインサイザルを採用することにしました。勿論、下顎の狭窄歯列も改善する場合、もともと本数の不足している上顎の右上に隙間ができることやスリーインサイザルで生じる下顎前歯部ブラックトライアングルは予測できますので、そこは最終的に歯冠修復で補うことは患者さんには了解していただく必要はあります。了解されましたので、矯正を開始しました。手順は以下のようになりました。
上顎APCセラミックブラケットボンディング+NTイニシャルワイヤー装着によるレベリング→プレート装着+NT角ワイヤーによる被蓋改善→右下1番抜歯+下顎APCセラミックブラケットボンディング+NTイニシャルワイヤー装着によるレベリング→下顎左6部近心に矯正用インプラント埋入+パワーチェーンによる左下5番念転歯の矯正開始→下顎NT角ワイヤー装着→上下ベンディングステンレスワイヤー装着+オープンコイル、顎間ゴム使用→保定矯正終了。という2年の治療経過を辿り、無事反対咬合、念転を改善しました。肩こりも、無くなったとのことです。恐らく、もともと口の中が狭かったので、上下共に側方拡大を行い、ある程度舌房が確保できたことが良かったのかもしれません。それにより安静位が確保でき、噛み締めぐせなどの習癖が改善されたのではないかと個人的に思います。

注)今後患者さんが希望されれば、下顎前歯部のブラックトライアングルは、ダイレクトボンディング(CR)や失活歯の被せもの、歯茎の移植で改善可能です。今回は、矯正治療のみにスポットを当てました。


症例20 水平埋伏左上5番のアップライト部分矯正(MTM)
30代男性

13年前、左上の奥歯が虫歯でボロボロのため、なんとか噛めるようにしてほしいとのことで受診されました。レントゲンからも視診からも、奥2本は保存不可能な状態で、かつ手前の第二小臼歯(5番)は、歯茎の中に水平に埋まっているのがわかりました。すべて抜歯してから、入れ歯もしくは固定式を希望されればインプラントというのが、一般的ではないかと思います。入れ歯は望まれませんでしたので、固定式の治療方針を立てるのですが、今回はインプラントではなく、歯茎に埋まった水平埋伏の5番の歯を利用することにしました。当然、そのままでは利用できませんので、矯正で水平埋伏の歯を起す必要があります。今行えば、矯正用インプラントを併用するので、簡単に短期間で起すことは可能でしょうが、当時はそのような絶対アンカーもありませんでしたので、部分矯正(MTM)では、水平埋伏歯の抜髄処置(神経をとる処置)や手前の歯(4番)のアンカーロスは避けれませんでした。また、期間も10ヶ月以上かかりました。ある程度6番の位置に起こしたところで、手前の歯とブリッジにし、終了としました。インプラントの場合は、骨移植、サイナスリフトなどの付帯手術の必要性や外科的侵襲面、費用面での負担が大きくなることは言うまでもありません。また、患者さんの改心度を計ることも難しいと言えるでしょう。もし、検診、自己管理ができるようになり、不幸に治療した歯がダメになったとき、インプラントに移行するのが患者、術者にとってベターではないかと今も昔も思います。

術前
ブリッジ装着後

症例21 第二大臼歯近心傾斜のアップライト部分矯正(MTM)
30代女性

右でものが噛めず、包括治療を希望され当医院を受診されました。第一大臼歯(6歳臼歯)の喪失期間が長く続き、奥の第二、第三大臼歯(親知らず)が倒れてきたことが原因と考えられます。全く上の歯と咬合接触していませんでした。上の歯と咬合を持たせるには、歯を正直(起す)させる必要あります。患者さんは、親知らずの抜歯には難色を示しませんでしたが、できれば第二大臼歯、第二小臼歯の神経保存を希望されましたので、親知らず抜歯、第二大臼歯アップライト矯正後スペースを設けたところにインプラントを埋入する計画を立てました。同意されましたので、治療を開始しました。まず、傾いた親知らずを抜歯後、臼後三角部に矯正用ミニインプラントを植立しました。2週間後、手前の第二大臼歯の暫間的な虫歯治療(CR充填)を行い、近心と舌側に矯正用リンガルボタンを装着し、パワーチェーン(矯正用ゴム)を矯正用ミニインプラントに括りつけました。1ヶ月後、ある程度正直してきたところで、第一、第二小臼歯並びに第二大臼歯にブラケットを装着し、できるだけ太い角ワイヤーを装着しました。さらに1ヶ月後、第一大臼歯部に約9ミリのスペースを設けることができたので、
径4.7ミリのインプラントを埋入することにしました。(2+4.7+2=8.7)。
インプラントがインテグレーション後、さらにインプラントを固定源に第二大臼歯を遠心に平行移動(歯体移動)する予定です。そのため、若干第二大臼歯寄りにインプラントは埋入しました。第二小臼歯、第二大臼歯間のワイヤーにオープンコイルを入れて、第二大臼歯の遠心移動を促す方法もありますが、反作用で第一、二小臼歯が転位する力がかかります。そのため、部分矯正(MTM)においてアンカーロスを無くすためには、矯正用インプラントの併用は有益だと思います。今回の場合、ブリッジは拒否されましたので、MTMにおいてメインのインプラントが果たす役割も大きいと言えるでしょう。

注)矯正とは関係ありませんが、簡単そうに見える第一大臼歯部へのメインのインプラント埋入は、難所は一杯あります。瞬時にデジタルレントゲン写真で埋入方向を確認できるシステムの構築、座位、立位での術者の埋入方向感覚や隣在歯の歯冠長があるときの開口量の把握などが重要のように思えます。頭がいいだけでは、乗り越えられない壁かもしれません。分かっていてもドリルやインプラントを隣在歯に当ててしまえば、今までの治療が無駄になるわけです。


術前
アップライト後
ダメな埋入方向
インプラント埋入後

症例22 上顎前歯部インプラント補綴のための下顎前歯部部分矯正(MTM)
60代男性

左上の前2本の差し歯が折れた状態で、当医院を受診されました。また、右上3本前歯はすでに欠損状態で、左上の3、4番と右上の4番にバネがかかる部分入れ歯(義歯)が装着されていました。よく義歯を見てみると既にヒビが入っており、左上の前2本の歯根が折れた原因も下の前歯と上の顎堤までの距離(クリアランス)が不足したために生じたオーバーバイト(過蓋咬合)が第一に疑われます。とりあえず、保存不可能な歯を抜歯し、使用している義歯を修理し、傷が癒えるまで使用していただくことにしましたが、何度もハセツし修理には困難を極めました。患者さんは途中からインプラントを希望されたため、天然歯が駄目になった原因と考えられるクリアランス不足や後々セラミックの上部構造破損原因となりうる下顎前歯部叢生を改善すべく部分矯正を行なうことにしました。インプラントの長期予後のためにしなければいけない前準備と言えます。勿論、患者さんが希望されなければ行いませんが、後々生じるであろうトラブル(セラミックの破損、上部構造の繰り返し起こるであろう脱離、固定ネジのハセツの可能性など)について十分に説明し、書面に書いて渡しておく必要はあると思います。
今回は、来院回数短縮、患者さんの希望により常時力のかかるブラケットワイヤー部分矯正を採用しました。同時に上にインプラントをGBR併用で3本埋入し、その間に暫間インプラントを使用し、固定式のものにも移行しました。幸いトラブルもなく無事4ヶ月でインプラントの骨結合と部分矯正は終了し、下は保定に移行しました。

術前レントゲン
抜歯後一ヶ月
NTワイヤーによる
レベリング
NT角ワイヤーによる仕上げ
保定

症例23 縁下カリエスが著しい左上第二大臼歯の挺出矯正
60代女性

左上の一番奥歯の被せものが脱離し、5年前に来院されました。レントゲン写真からも視診からも、虫歯が歯茎の下深く進行しているのがわかります。姑息的な治療の場合、そのまま中が虫歯なのに、被せものを再装着して終わることが多いと思います。しかし、繰り返し被せものの脱落が起こり、いずれ抜歯になる運命は避けられませんが、患者さんが応急的にと希望されれば仕方のないことでしょう。今回、患者さんは、ある程度根本的な治療を希望されましたので、縁下カリエスに対する処置として挺出矯正+歯冠延長術を採用することにしました。勿論、抜歯→インプラントも悪くないと思いますが、天然歯の保存に極力努めてみました。
最初に、十分な根管処置が施されていなかったので、再根管治療を行いました。近心根は石灰化が著しく、結局オープンしませんでしたが、将来問題が生じる可能性は少ないと思います。次に仮歯に矯正装置を組み込み、挺出矯正を開始しました。引き上げたい分だけ、アンカーと距離を離し、矯正ゴムを括りつける必要があります。下とのクリアランスがないと、結構厳しいかもしれませんが、今回は十分なクリアランスが存在したので問題はありませんでした。2ヶ月後、3ミリ程引き上げ並びに歯茎の増殖が認められたので、今度は、歯冠延長術を施しました。1ヶ月後、仮歯で問題がないことを確認し、最終補綴物を装着し、終了としました。4年後、レントゲン写真を撮ってみると、問題なく機能しているのがわかります。根管処置、部分矯正、歯周外科処置などの包括治療が、功を奏したケースだと言えます。

術前
矯正中
矯正完了、
歯冠延長術後
補綴4年後

症例24 左下親知らずの第二大臼歯への近心移動
矯正用インプラント+メインのインプラントアンカー併用矯正
40代男性

3年前(2013年)に左下の折れた歯(7番)の抜歯並びに欠損部インプラントを希望され当医院を受診されました。ぱっと見、固定式の治療の場合、インプラント以外にもいろいろな治療法が思い浮かびますが、元々の欠損部にインプラント、抜歯したところに矯正で後ろの親知らずを手前に移動する方法が最高の治療プランだと個人的に思います。誤解しないで欲しいのですが、所詮インプラントは身体にとって異物です。さらに歯根膜が存在しないため、天然歯に比べて感染防御機能が弱いということを十分に理解しておく必要があります。そのため、必要最低限のインプラント本数で行う方が患者さんにとって費用的にも、肉体的にも最適だということです。また、今回の場合、上下親知らずの移植を2本行うということも可能かもしれませんが、年齢面や歯根膜のダメージといった観点から、生活歯である親知らずの手前平行移動矯正とインプラントによる骨とのオステオインテグレーションのほうが遥かに予後が見込めるはずです。患者さんが希望されましたので、やることにしました。普通であれば簡単ではない部分矯正ですが、絶対アンカーである矯正用インプラントとメインのインプラントを使用すれば、他の歯のアンカレッジロスなく、期間の短縮や歯体移動を可能にします。保定こみで約9ヶ月の治療期間を有しましたが、インプラント治療だけで行うよりもワンランク上の治療と言えます。
私が十年前には出来なかった憧れの治療法です。十年前であれば、間違いなくインプラントだけで治療したと思います。そして、咬合を考え奥の親知らずは抜歯するでしょう。
因みに費用ですが、インプラント1本ー32万、モニター近心移動矯正保定こみー15万(通常25万)、合計ー約47万です。
インプラント2本で処理した場合、インプラント2本ー64万、抜歯後の骨移植ー10万、合計ー約74万です。
お金だけ追い求めれば、断然インプラント2本です。しかし、いろいろなことを考慮すると、本当に患者さんのためになるのは、今回の治療法と言えるのではないでしょうか?


症例25 右下親知らずの第二大臼歯への近心移動
矯正用インプラントアンカー併用矯正
20代女性

右下第二大臼歯が虫歯でぐちゃぐちゃのため、そこを抜歯して、奥の親知らずを移植してほしいとの希望で当医院を受診されました。前の医院では、抜歯後、手前の歯2本を被せて1本ダミーの歯をだす延長ブリッジを薦められたとのことです。保険でも認められている立派な治療法ですが、あまりいい治療案とは言えません。それをやるぐらいなら、抜歯放置であまり問題ないと思います。しかし、向かい合う上の歯が経年的に挺出(歯が下に伸びてきます。)してきます。そのため、治療オプションのない歯科医は延長ブリッジを薦めるのですが、上(7番)の挺出を予防するかわりに下の6番の歯が過重負担で、クラックが生じ後々問題が発生してくる可能性が高くなります。そのことを患者さんは調べてかどうか理解していました。
アドバンス的には、延長ブリッジをしないで欠損部に固定式の歯をいれる場合、三つの方法が考えられます。1.抜歯後インプラント、2.親知らずの移植、3.親知らずの7番への矯正近心移動(前にずらす移動)です。この三つの中で一番理想的なベストの治療法は、3番目なのです。しかし、欠点もあります。1.期間(一年以上)がかかること、2.部分矯正で行う場合他の歯に多少アンカレッジロスが生じること、3.部分矯正で下顎の場合複数根の親知らずを平行に移動させることがかなり難しいこと、4.親知らずが矯正力により歯根吸収を起こしかねないこと、5.自費治療であることなどが挙げられると思います。しかし、今回の場合残念なことに、親知らずの移植は適応外なのです。患者さんにはなぜか説明しましたが、ここでは理由は言いません。
再度患者さんにどうするか尋ねたところ、矯正治療を希望されました。そこでまず、固定源になる6番の虫歯の処置を行いました。神経温存かどうかで悩みましたが、矯正期間中に痛みがでると困るので、適切な根管治療を行い、仮歯をセメントで装着しました。6番の手前の歯は、なんとかプラスチック修復で神経温存に成功しました。矯正治療は、虫歯治療が完了して行うのが一般的です。矯正治療をこれから考えている方は、頭に入れておきましょう。笑
次に矯正治療に移るのですが、今回非常にラッキーなことは、1、親知らずが遠心方向
に傾いていること、2.親知らずの歯根形態が単純であること、3.7番の抜歯穴を利用できること、4.6番が三級傾向であること、5.5,6番の間に矯正用のインプラントが埋入可能であることです。運も味方しています。その結果、約一年くらいで、近心矯正移動を終了することができました。
因みに費用はモニター価格で、矯正装置、矯正用インプラント、調整料、保定込の15万(通常25万)です。(6番のオールセラミックは別です。)

術前パノラマ
矯正中パノラマ

術後パノラマ

術前咬合面観

術後咬合面観

インレー除去後の右下6番、カリエス

右下6番根管治療中

右下6番オールセラミック装着後

術前矢状断CT

術前右下7番
前頭断CT

術前右下8番
前頭断CT

参考例) 延長ブリッジで支台となる6番を傷めているケース(歯周補綴で行う延長フルブリッジとは、考え方がちょっと違います。)
右下延長ブリッジ
左下延長ブリッジ

症例26 上顎過蓋咬合、下前歯部叢生の非抜歯矯正
拡大床+マルチブラケット+ツインブロック+マウスピース
低学年女性

前歯がガタガタでなんとかしてほしいとのことで受診されました。私は矯正を専門としていませんので、悪いですが、特に小児矯正の場合、価値観があわないとか簡単に考えている親御さんにはお断りしています。今回の場合、紹介者(祖母)がしっかりした人でしたので、必ずある程度治しきるという意気込みで一期治療を引き受けました。恐らく、小児矯正を行わない場合、抜歯矯正あるいは外科矯正が将来必要になってくるでしょう。そのことをお話して、まず顎の拡大を促し、凸凹の歯がきれいに並びやすいスペースを作ることにしました。半年くらいかかったと思います。次に上の前歯はブラケットを併用した部分的ワイヤー矯正を行い、軸補正を行いました。最後に見た目がある程度改善しましたが、実は下の前歯が上あごの歯茎を噛み込むくらいな過蓋咬合のため、奥歯の前後的位置補正のためのツインブロックを使用して、上顎前凸の改善を行いました。2年程かかりましたが、将来ビューティコロシアムにでる可能性は低くなったのではないでしょうか?笑。それは冗談として、真面目な親御さん、娘さんでした。

症例27 右上親知らずの第二大臼歯への近心移動
矯正用インプラントアンカー併用の部分矯正(MTM)
30代女性

定期検診中、右上の奥から二番目の歯は、レントゲンでは虫歯が怪しいとは思っていましたが、触れば抜歯は免れないと思い、治療は躊躇していました。患者さんも自覚症状を訴えることもありませんでしたが、匂いの原因となっていましたので、抜歯になるかもしれないという前置きをしてから、触ることにしました。案の定、被せものと土台を外してみると、二次虫歯が著しく、歯もヒビが入り、抜歯が適応と判断しました。歯を残す場合、重度根尖病変、歯周病よりも実は歯茎下まで進んだ二次虫歯が著しい方が困難なことが多いと言えるでしょう。勿論、この歯を専門家がみても素晴らしいと思えるくらいに治せる他の歯科医は存在するかもしれませんが、私には無理です。笑。そこで抜歯後、インプラントもいいかもしれませんが、今回は奥の本来不必要な親知らずを抜歯した歯のところに矯正でもってくることにしました。移植もいいと思いますが、上顎洞の挙上をしなければいけないので、難易度は高いでしょう。
まず親知らずの神経処置を行いました。実は神経はできれば除去したくなかったのですが、挺出が著しく、移動の際に下の奥歯にぶつかるため、せざるをえませんでした。勿論、患者さんには模型を見せて了解済みです。あと手前の6番の歯も二次虫歯が進行していたため、親知らず移動後、保定を考慮した、手前の虫歯治療する歯と連結固定することも了解していただきました。次に7番抜歯後、部分矯正はCTで分析して歯根間距離のある4,5番の間に矯正用のインプラントアンカーを埋め込みそれを固定源にしたワイヤー矯正を行いました。4ヶ月でやや傾斜気味になったとはいえ、無事6番に付くくらいに移動でき、連結補綴を装着して終了することができました。まあ、インプラントが医院にとって利益率が一番いいかもしれませんが、今回採用した治療法が患者さんにとって一番良かったのではないでしょうかね。

術前
術中
術後


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